寺村光輔

寺村光輔

April 04, 2016

Exhibition

寺村光輔 陶展


むかしむかし、編集者という生業による、

何か新しいことを伝えなきゃ!という

前のめりでゴーマンにもほどがある思いからか

いろんなパン屋さんで食パンを買ってきては、

食べた感想をツイッターでレビューするという

「きょうの朝ごパン」という連載を、

誰にも頼まれていないのに、勝手にやっていた。

一見、シンプルで定番すぎる食パンも、

店によっての思いが全然違ったりするので

食べ比べるのは、ほんとうに面白かった。

しかし食パンは、だいたいにおいて1斤売り。

買うのは5枚切りと決まっていたので、

当たり前だが、毎朝食べても5日かかる。

5日あくのが、だんだんガマンできなくなり、

食べきれないまま、別のお店で買う、

ということをやっていたら、家の冷凍庫は、

いろんな食パンでパンパンになった。

そしてやっていくうち、やっていくたび、

ある事実に、心の中では気づいていたけれど、

どこかで必死で気づかないフリしていた。

それは本当に自分が食べ比べたいのではなく、

ツイッターでつぶやく、というためだけに

血眼になって、あちこちのパン屋に奔走し、

無理して食べ比べている、という事実だった。

ただ、自分にはウソをつけなくなったのか、

次第に頻度は落ち、ついにはやめてしまった。

一時は相当数いたフォロワーも離れていった。

やめないでーという惜しむ声もとくになかった。

そしていま。

自分が暮らしている街の近くにある、

自分がおいしいと思ったいくつかのお店から

パンを買い、当たり前においしく食べている。

たしかに地味。

だけど、そもそも日々は地味なもの。

それよりも、いつもの感じがそこにある

安心感のほうが、若干まさりつつある。

っていうか、もはやそっちが止まらない。

トシだから、だろうか。

それもあるだろうけれど、

それだけではない(と思いたい)。

ツイッターで連載をしていた頃の

むやみにギラついた好奇心も必要だった。

あれこれ試し、傾向をつかみとり、

何が流行っているのかも客観的に知り、

結局のところ、自分の好きは何なのかを

細かく、深く発見できた。

だからこそ、ここにたどりついた。

パンのバックパッカー旅は終わったのだ。

これからは、自分の身の丈にそぐう、

たどりついたからこそできる、

悠々自適なパン旅を続けたいと思っている。

それは、器もそうかもしれない。

(と、とってつけたように書く)

(文・山村光春/BOOKLUCK代表)


寺村光輔 陶展
会場=mist∞
日時=2016年 4月9日(土) - 4月15日(金)
在朗日=4月9日、10日
住所=〒180-0001 東京都武蔵野市北町1-1-20 藤野ビル3F
営業時間=4月9日、10日 12:00-20:00
4月11日~15日 12:00-17:00
電話=0422-27-5450
メール=info@misto.jp
URL=http://www.misto.jp/